謝りたいときのマヨゲン其の1

「謝りそびれた瞬間に、戻れるなら今すぐにでも」

ああ、他愛もない冗談のつもりだったのに、たぶんそのときボクは、キミの痛いところを突いてしまった。正拳突きでズドンと。毒針でブスリと。日本刀でサクリと。そんな軽々しさをまとった何気ない言葉でグサリと、キミの痛いところを突いてしまった。最悪だ。最も悪いと書いて、最悪。サイアク。

キミの表情が消えてから、一瞬だけ消えてから、それからずっと100%には戻らないまま。ボクの言葉でできただろう傷が治ったのかすら知りようがない。傷ついたと言ってもらえるレベルの傷だったら良かったのに。一瞬だけ消えたキミの表情は笑顔にシフトチェンジしたままボクの前からフェイドアウトしていった。

フェイドアウトしたまま取り返しのつかないまま、あれから何年が過ぎた。

すぐにゴメンと言えたら何か変わったのかな。

すぐに謝っていれば今もキミと友達でいられたかな。

すぐに謝ることができていれば。

そんな思いを抱いたまま、これからも生きていくのだろう。

そんな思いをいくつも抱いたまま、これからも生きていくのだろう。

キミの傷が軽く済んだように。と、いつも願っている。

いつも願ってきた。

いまも願っている。

キミの傷が負ったことさえ忘れるくらいに軽い傷であったように。

いつも。いまも。

謝りそびれた瞬間が、いつも突然フラッシュバックする。

ボクを苛む申し訳ない思い。苛まれる痛みに慣れてきたとしても申し訳ない思いの丈は減ってはいかない。

このまま、ずっと、それを背負っていく。

それでいい。

それでいい。

できれば、キミがボクのことなど忘れてくれて、ボクのつまらないコトバなど忘れてくれて、キミの傷が消えていてほしい。傷痕など微塵も感じさせないくらいキレイさっぱりと、記憶ごと傷も消えていてほしい。

ごめんなさい。

まだ間に合うなら。

もう間に合わなくても。

こころのなかで、道を歩きながら声になって、ごめんなさい。

あのとき、謝りそびれたことを後になって悔いているボクは

謝りそびれた瞬間に戻れるなら今すぐにでも

そんな思いの分だけ言葉を選べるようになり、

愚か者なりに前に進んでいる。

キミに謝れる日がもし来るなら、どのような言葉を。

謝りそびれた瞬間戻れるなら今すぐにでも。

悔いのない、今を。

ごめんなさい!

その一言を。

ごめんなさい!


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