ただ悲しいときのマヨゲン其の1
「ただ悲しいときは、ただ悲しんで解き解せ」
わけもなく、何となく悲しいときって、あるよね。今日のボクはそんな感じです。言葉にできない何かがあって、ただ悲しい。
どこかへ行くでもなく、つけたテレビを見るでもなく、ぼんやりと座っているだけ。何かを見ているようで何も見ていないようで、ぼんやりとしているようで、時々ハッと頭を振る。何が悲しいのか、分からない。そういうときどうしたらいいのだろう。
「ただ悲しんで解き解せばいいよ」
いや、まず「解き解せ」が読めないよ、LGBTQ友人代表快速ミヤゾーくん。もう少し分かりやすく。キミがいくら快速だからといって、他の人も足が早いとは限らないだろ。ボクがすでに置いていかれ気味なことに気付いてくれ。
「ああ、すまんすまん。まず解き解せ”は“ときほぐせ”と読んでくれ」
なるほど、解き解せは“ときほぐせ”だね。よく使われる感じなのかな? 漢字変換では一発変換されるので当て方としては正しいのかもしれないけど、時間がないので辞書は引かないよ。
「人は、ただ悲しいなんてことはないんだよ。ただ悲しいにも理由はある。ひとつかふたつか、もしかしたらいくつもあるかもしれない些細な悲しみが束になってしまったとき、人はただ悲しくなるんだ。」
それはどういうこと。ひとつひとつは大したことない悲しみだということ?
「大したことない悲しみって、なんだ。そんなのあるか、バカタレ。」
何となく悲しい気持ちの人間をつかまえて、バカタレとはなんだバカタレとは。人をバカと言うヤツがバカだぞ。
「悲しみは人それぞれ、じゃないか。」
それはそうだ。
ボクの悲しみはボクのもの。誰かに分かってもらえないことはよくある。話したくても話せないこともよくある。
最近は……分かってもらおうという気持ちもあまりない。分かってもらおうと考えるから、分かってもらえないときにつらくなる。
「だから悲しみの大きさも人それぞれなんだ。俺にはオマエの悲しみのすべては分かってあげられない。分かろうとはするけれど。」
大丈夫だ、LGBTQ友人代表快速ミヤゾーくん。その気持ちは充分伝わるし、キミにそういうところがあるのは昔から知っている。
「人には言えない悲しみ、自分では解決できない悲しみ、日常に漂っている悲しみ。何気ないところで心に溜まっていってしまう悲しみ。そんなもので心が埋まってくると、人はただ悲しくなるんだよ。」
ああ、少し分かってきたかも。それは何となく理解できる気がするよ。遠くで誰かが自分のウワサをしている気がする。被害妄想かもしれないとも思うよ、だから気にしないようにするけれど、でも自分のウワサをしているようで気になるんだ。どんなウワサか、たぶんあまり良くない言い方をされているんだろうな、とか。
「俺はマイノリティだから、いまオマエが言ったことはよく理解できるよ。」
ありがとう。
「ただ悲しいときは、ただ悲しんで解き解せ」
うん、それはまだ分からない。
「それはオマエがバカタレだからじゃなくて、楽天家だからだ。決してどこぞのIT会社の回し者という意味でもなく。」
おっと変なところで変なジョークをぶっこんできたね。しかも割りと強めにディスる感じだ。ボクの知り合いはみんなこんな感じだ。
「自分が悲しい気持ちであることを認めて、最近は何があって悲しいと感じたのか、ひとつひとつ振り返ってみる。どういうときに悲しかったか、重なっているものを解き解してみる。そうすることで、少なくとも、自分は自分を分かってあげられる。」
悲しみを解き解して、自分で自分を分かってあげる。
「そうだよ。まず自分で自分を分かってあげる。悲しみが塊になって重石になっているのを、ひとつひとつ振り返って、引きはがして軽くしていく。」
重石を軽石にするのか。
「上手いこと言ったぜ、みたいなドヤ顔はやめてくれ。軽石だってバカにはできないことを、海岸線を埋め尽くした軽石でみんなが理解したはずだが。」
その通りだね。悲しみの軽石もバカにはできないな。
「ただ悲しいときは、ただ悲しんで解き解せ」
うん。分かったよ。自分が悲しいということを認めて、悲しみの理由を確かめていく。ひとつひとつの理由を確かめていけば、もしかしたら悲しみのひとつくらいは解決できるかもしれないな。
「解決できなくてもいいんだ。ただ、自分がなんで悲しいのか、自分で自分を分かってあげるのが大切なんだよ。そのためにはまず悲しむこと。そういうこと。」
ありがとう、LGBTQ友人代表快速ミヤゾーくん。キミが友達で本当に良かったと昔から思っていたよ。そして今日も。
ただ悲しいときは、ただ悲しんで解き解せ。
自分で自分を分かってあげること。
さあ、今日を始めるよ。
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