強くなりたいときのマヨゲン其の1

「本当に強い人は、自分の弱さを認めている」

強いって、なんだろう。と、幕之内一歩のようなセリフをつぶやいてみる。

ボクは強くなりたい。うわ。これも幕之内とカブっている。

でも、本気だ。ボクは強くなりたいんだ。

本気だ。

本当に強いって、なんですか? んん? これも幕之内一歩か? 恐るべし幕之内一歩。どれだけ強くなりたかったんだ。今はトレーナーですけど。もう復帰しないのかな。やっぱりボクサー幕之内一歩が見たいし、世界チャンピオンになってほしい。まだ若い設定だし。

「本当に強い人は、自分の弱さを認めている」

と、話をむりやり元に戻す。

ボクの人生の、ボクの話だ。

教えてくれたのは今日も鈴木センパイだ。鈴木センパイはただの筋肉好き休日はトレジム通いマッスル野郎じゃない。ただのポロシャツ胸襟ムキムキ野郎じゃない。

 本当に強い人は臆病で、臆病な自分の弱さを自分で理解している、らしい。と言われても強さに自信のないボクには分からない。

 子どものころはクラスにケンカが強いヤツもいて、頼れるヤツも近寄りたくないヤツもいた。中学になると単純にケンカが強いヤツとは住む世界が違っていったから話すこともなくなったし、頼れるヤツはケンカをしなくなって代わりに部活でインターハイに出たり、テストで総合上位に名前が載るようになった。正直いけ好かない。いや、そんなことはない。それはただの嫉妬だ。

 本当に強い人は、自分を知っているから虚勢を張らない。虚勢。去勢? ちげーよ。サイテーなボクだ。でもコレは何となく分かった。自分の実力を知っていて、必要以上に自分を強く見せたりしないということだ。

本当に強い人は、自分を知っているから自分の弱さを話せる。ボクなんか、自分の弱いところしか話せない。でもコレも何となく分かった。自分の強いところも弱いところも知っていて、きちんと認めているという意味だ。認めていないことは話せないもんな。

あれ? じゃあボクは本当は強い人なのか?

そんなこたぁねえよ。絶対有り得ない。

え。でも、ボクは自分の弱さを知っていて認めていて、説明できる。それしかできないという見方もあるけど。

 え。それでもいいの? それがいいの? 自分を知る人は強くなれる。強くなるには自分の弱さを知るところから? じゃあ、最初からそう言ってよ。

「強くなるには自分の弱さを認めるところから」

と、筋肉好き休日トレジム野郎の鈴木センパイの教えを書き換えて、今日を始めるよ。


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