前を向きたいときのマヨゲン其の3

「進む、戻る。それでも前を向きたい。」

ああ、あなたもそういうことを考えていたんだね。というような、心に影を差すような出来事があっても、ボクは前に進みたい。

意に介さないとか、そういうことではない。

傷は抱えている。
ただ傷の痛みに囚われないようにして。

小さく、しかし灼熱の、どす黒い炎も胸の片隅にある。

でも炎を育ててしまわないように、前を向いていきたい。

まるで交換条件だと思われるかもしれない。

違う。

誰も傷つけたくはない。

益のない争いはしたくない。益があってもなるべく争いたくはない。

ただ、前に進みたい。

一歩、足を前に進めたら、強い向かい風が吹いて、身体ごと後ろにずらされる。

吹き続ける向かい風のなかで、また一歩、足を進める。

進む、戻る、進む、戻る。

それでも。

身体が戻される間に二歩、足を出せれば。

向かい風が止むまで足を止めなければ。

進む、戻る、それでも前を向きたい。

進む、戻る、それでも前を向きたい。


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