優しさがほしいときのマヨゲン其の3
「短所しかない。」
「短所も長所も、長所で短所だ。」
人間は誰でもオンリーワンなんだ。世界に一つだけの花。そんな歌があったなあ。昔からある楽曲だよね。いまのボクには優しく響くなあ。
「争いは要らんが、競争は必要だと思うぞ。」
な、なんだよ、いきなり。肉体絞り魔改造バスケ野郎のオカやん。人間は誰でもオンリーワンなんだ。ナンバーワンじゃなくてもいいって、SMAPも歌っているだろ。
「そうだな。ま、俺が言いたいのは、花がキレイに咲くのも、生存競争のひとつだということさ。」
いやそんな揚げ足取りなことを言うなよ。
そんなことを言い出したら、世の中のすべて、見えるもの聞こえるもの全てが競争だZ! みたいになるぞ!
「うーん。まあ、いまのオマエの意見は何となく合っているっぽいけど、何となく違うな。俺が言いたいことではないZ!」
……ボクが始めたものをかすめとるなんて、何となく小ズルいサッカーで勝ってしまう紫っぽい色のプロサッカーチームみたいだな。
「おい、オマエらしくないぞ、気をつけろ。」
昔は勝利のために必死になって気迫が前に出ていた先のマリーシアだったのに、いまはただマリーシアも技術のうち、みたいになっている。
フェアプレー賞とか受賞してさ、リーグを連覇していた頃が懐かしいよ。いまのサッカーはただ小ずるいが先に来てさ、チーム全体的に何となくせこいチームになっているよ。せっかく良い選手もいるのにさ、勿体ない。ワクワクしないんだよ。
「おい、オマエ。いまのでほぼチーム名を名指ししたぞ。それでいいのか。オマエのやりたいことはそれなのか。サッカーチームを身勝手に評価して貶めるのがオマエのやりたいことか。」
あ、ごめん。ちょっとテレビで見たばかりで。イライラしていた。
「オマエのイライラと、俺は関係ねえよ。オマエのイライラを俺にぶつけるのはやめろ。自分のイライラを他人にぶつけるから、オマエの嫌いな争いが生まれるんじゃねえかよ。」
そうだった。やっぱりボクには短所しかない。いや、本当に短所しかない。
「オイ。オマエにはゼロか100かしかないのかよ。AじゃなければB、なんてのは小学生の思考だZ!」
いやでも、オカやんの言う通りじゃ……
「はーあ、うっせえうっせえうっせえわ!」
そういうのはやめろ!って話だろ!
「いいか、オマエがオマエを嫌いになるのはオマエの自由だが、オマエの短所は短所でも長所でもある。ついでにオマエの長所も短所でも長所でもある。つまり、パクチーは好きな人もいれば嫌いな人もいるが、好きな人にとってはパクチーは良いもの、嫌いな人にとってはそうではない。コリアンダーを嫌いな人は少なくないと思うが、嫌いな人にとってはコリアンダーは良いものではないが、好きな人にとっては良いもの。そういうことだ。」
そんなこと言われたって、パクチーは匂いも味もボクは苦手だ。コリアンダーはスパイスだろ。ボクは料理は得意ではないけど、スパイシーな食べ物は好きだよ。スパイス系のカレーにもよく入っているし。
「そう、そしてパクチーとコリアンダーは同じ植物だ。同じものが好きにも嫌いにもなる。オマエの短所も、俺の長所も、人によっては短所にも長所にもなる。それと、まあ似たようなもんだ。」
えええ! パクチーとコリアンダー同じ植物なのかい! 知らなかった……。
「オマエにとってのパクチーは……。」
匂いも味も短所しかない。
「オマエにとってもコリアンダーは……。」
好きな食べ物に使われているスパイス。
「短所も長所も、長所で短所だ。」
短所も長所も、長所で短所だ。
「どうだ、俺は今日も優しいだろう。」
ありがとう、オカやん。何となく優しい気持ちになれたよ。
「そうか、じゃあ、まずサッカーチームに謝っとけ。」
そうだね、紫っぽいチームのみなさん、文句ばかり言ってゴメンナサイ。これからも頑張ってください。
それでは、今日も始めよう。
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