優しくなりたいときのマヨゲン其の2

「優しさって、理解しようと試みること」

あなたって、優しいよね。と言われてもね。自分が優しいとは1mmも感じていないんだ。ボクは何も優しくない。ただ普通に生きているだけじゃないか。

「あなたって、優しいよね。」

どこが? ボクには“あなたは優しい”の意味が分からない。どういう行為が“優しい”のか、どんな言動が“優しく”映るのか、全然分かっていないんだよ。

「優しいよ。わたしのことを理解してくれる。」

そういうキミは、昭和型高機能性働く女性こと突撃シゲマルさん。ストラテジックな人が趣味でニッチなポイントを探しては突撃していくキミが、ボクなんかに何の御用?

「あれ? わたしはフルーレだけじゃなくエペもサーブルもやってきたのよ。知らないはずはないわよね。」

なぜいきなりフェンシングの話題をぶっこんでくるわけ? なんでそんな、大学時代にフェンシング全日本選手権で準優勝しましたよ、みたいな発言が出てくるわけ?

あなたは優しいわよ。わたしがどういう人間なのかをちゃんと理解しようとしてくれているから。」

理解しようとする……? そんなのは当たり前じゃないか。目の前の人を理解しないで、どうやってコミュニケーションをとればいいの? それは優しさじゃない。当たり前の行動だよ。人を理解せずに、コミュニケーションはとれないから。

「じゃあ、あなたが“この人は優しい”と感じる瞬間はどんなときなの?」

それは……その人がボクのやりたいことを優先してくれるとき、かな。その人はボクの考えや行動の意味を理解していて……理解していて……理解していて……優先してくれることがある……。

はい、論破。

い、いやいやいや、なにそのドヤ顔。ちょっと待ってよ、優しさって、それだけじゃないでしょう。他にも優しいって感じる場面はあるでしょう。絶対にあるよ。ないはずがない。

「いまあなたが思い浮かべたのはパートナーのことよね。たぶん。いまの。わたしじゃない人。」

いやいやいや、それはそれ、優しさは優しさ。いまは優しさの話でしょ!

「そうだね。じゃあ、もうひとつ。あなたがそれほど親しくないとか、全く知らない人に対して、あ、この人は“優しい”人だ、と感じる瞬間はどんなときだだろうね。」

……横断歩道で小さな子どもやお年寄りが歩いていたら、声はかけないとしても、無事に渡れるか見守っているような人。

「ほかには?」

……電車やバスで妊婦さんやお年寄りが乗ってきたら席を譲る人。

「ほかには?」

……道でしゃがみ込んでいる人に大丈夫かと声をかける人。

「気づいている……?」

……その人が何かを求めているか、何を欲しているかを察してあげて、その方向へ進むのを助けようとする人……?

優しい人って、目の前の人のことを理解しようとするのよね。それは、ただ譲るのとは違う。ただ意味もなく、惰性や習い性のように自分より他人を優先するのとは明らかに違う。目の前の人の考えや気持ちを理解しようと努力する。道を譲ってもいいかどうか、席を譲ってもいいか、ちゃんと判断する。そういう人のことを優しいと言う。わたしはそう考えている。」

……ちゃんと理解しようとする人は、どういう行動をするのさ。

理由もなく他人を急かすような人には、フレッシュ、ファンデヴゥ、するかもね。」

なんで突然、前に進んで突くんだよ。いやボクにフェンシングの説明はムリだって。ウィキペディアから引っ張ってくるのにも限界があるよ。

「コイツは急ぐ理由もなく人を急かしているだけだ。そんなヤツに譲る必要もない。と、考えるよね、あなたは。」

考えるかもね。でも、

「でも、ああ、コイツは意味もなく人を急かすような人なんだな。関わりたくないから、先に行かせてやろう。とも考えるかもしれないわね。」

ちょっと。そんなにボクのことを理解してくれているわけ。

「そうね。昔、あなたがわたしのことを理解してくれていたくらいには、いまのわたしもあなたに優しくなれている気がする。昔のわたしは、ただ“理解してほしい”人間だった。自分の生い立ちのこと、これまでのこと、当時の自分のこと。あなたに理解してほしかった。でも、あなたのことはあまり理解していなかったと思う。」

そんなことはないと思うけど。

「優しさって、理解しようと試みること」

理解しようと試みること。

「あなたは優しい。昔も今も。」

ボクは優しい。昔も今も。いや違う、ボクは優しくない。理解しようとするのは当たり前のことだと言っただろ。

「そうね。」

だから、ボクは、

「そうね。理解しようとするのは当たり前だ、と、言える人が“優しい人”なのよ。人に優しくするというのは、その人を理解しようとすることだから。あなたは“優しい人”で間違いなし。はい、論破。」

うーん。うーん。

「あら? 言ったわよね。わたし、フルーレ、エペ、サーブルのなかではサーブルが好きなのよ。突きも切るもOKな競技。」

ボクが何をしたから脅しにかかるわけ? ねえ、なんで?

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それでも、今日を始めるよ。


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